パニック障害


【症例1】

 不安、緊張を訴え来院。7年前にパニック障害で2年間治療したことがあるという。近々人前で話すことになり、何日も緊張が続いている。以前、人前で話した時に声も体も震えてトラウマになっている。

【漢方診断】

気逆、瘀血、水滞と考え、柴胡加竜骨牡蛎湯桂枝茯苓丸を処方。1週間後、調子が良かったが、リハーサルで声が震えてしまい、気分がやや低下。しかしリハーサルの直前まで緊張せずにリラックスして望めたのは初めてのことだったとのこと。内服2週間後(本番2日前)受診。いつもは本番1週間前からおかしくなるが、今回は気持ちが安定していると。内服3週間後受診。本番を迎えたが、全然緊張せずに話ができて、逆に楽しかったと笑顔で話される。後日談だが、拡張期血圧がこれまで90mmHgを切ったことがなかったのに70mmHg台に下がったと話された。

【考察】

 西洋医学的にはパニック障害と考えられる症例であった。漢方的には気逆、瘀血と考えた。緊張すると下痢をするのは、肝鬱脾虚のためであろう。気虚スコアは2/8だが、これは真の気虚ではなくこれも肝鬱脾虚のためであろう。やや実証、陽証より気逆に対し柴胡加竜骨牡蛎湯、瘀血に対し桂枝茯苓丸を選択した。スタンダードな処方、組み合わせだがよく効いてくれた。正面の証だったのかも知れない。

 パニック障害にはいくつかの証があるが、柴胡剤でうまくいくこともあるし、駆瘀血剤を用いなければ効かない場合もある。気の異常、とりわけ気逆(奔豚気)であることが多く、瘀血の場合は瘀血の精神症状を伴うことがある。実証で便秘がある場合は積極的に桃核承気湯を用いる。


【症例2】

主訴:不安、めまい、動悸

経過:

 病気の子供と病気の犬と暮らしており、不安感が消えない。時にめまいや動悸を伴う事もある。犬が病気で苦しむのを見ているとパニックになってしまう。家に帰りたくなくなる。

現症:舌候 淡紅、脈候 硬 

経過:

06/25 不安神経症と考えデパスと柴朴湯。

07/30 効果なし。柴胡加竜骨牡蛎湯へ変方。

08/11 犬の病状がひどいので不安は続いているが、柴胡加竜骨牡蛎湯効いている気が   する。半夏厚朴湯を追加。

08/16 ちょっと気持ちが楽になった。

08/31 時々不安になる。リーゼ頓服とした。

090/3 高速道路に乗る時、ドキドキするので救心飲んでいる。甘麦大棗湯を頓服とし   た。9/4 甘麦大棗湯はよく効いた。ドキドキ感が全くなくなったし、高速道路

   乗るときの緊張感も全くなかった。食事も作れるようになり、体が動くように

   なってきた。

09/11 リーゼ頓服の回数が減ってきた。

10/10 かなり体調も良くなってきた。


                【症例3】